[ 稽古 ]初めての初釜
2012年1月8日。
師匠のお稽古場で迎えた初釜の記録です。
今から14年前。茶道を始めて3年目の、まだ右も左も分からない頃でした。おそらく人生で初めての初釜だったと思います。

まず大変だったのは着物でした。
朝早くから起きて、自分で着付けをしながら準備をしたことを覚えています。普段のお稽古とは違う特別な日。緊張しながら帯を締め、「ちゃんと着られているだろうか」と何度も鏡を見ていました。
お稽古とは違う特別な設えの茶室。
いつもとは異なる席順や道具の配置。先輩方がうやうやしく床の間を拝見しながら進んでいく姿を見て、「次は何をするのだろう」と焦りながら、必死に前の方の所作を真似していました。
やがて先生がお入りになり、新年のご挨拶が始まります。
その時の光景は、今でも鮮明に覚えています。
皆が一斉に頭を下げた時の衣擦れの音。
そして揃った声で交わされる、
「おめでとうございます」
という新年のご挨拶。
その瞬間、お稽古場全体がひとつになったような感覚がありました。晴れやかで、凛としていて、どこか背筋が伸びるような空気。
茶の湯の中で新しい年を迎えることの誇らしさを、末席に連なる一人として感じた瞬間だったように思います。
席では見たこともないほど大きな茶碗が登場しました。
まるでお相撲さんが使うような大きさに見えたその茶碗で濃茶が練られ、皆で回し飲みをします。
そしていただいたのは、新年ならではの花びら餅。
白い餅の中からのぞく甘いごぼう。京都でよくいただいていたのですが、逆に新年の茶席で使われるものとは知らず、正月ならではの特別なものとして強く印象に残りました。
先輩方の堂々とした着物姿。
静かでありながら張りつめた空気。
華やかでありながら品格のある時間。
私はその日、「この空気感が好きだ」と強く感じました。
先生や先輩方がつくり出す凛とした世界は、他では味わうことのできない贅沢な時間でした。
今、自分が生徒さんたちと初釜を迎える立場になってみると、あの日感じた憧れや高揚感を大切にしたいという気持ちが一層高まります。
お茶の知識や作法よりも先に、私はあの場の空気に心を奪われました。
衣擦れの音、揃った新年の挨拶、先生先輩方の凛とした姿。
それらが重なり合って生まれる時間こそが、私を茶の湯の世界へ引き込んだのだと思います。
それが、私が茶の湯を好きになった原点なのかもしれません。
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