[ 稽古 ]松滴庵の小間で学ぶ、静けさ
先日、品川歴史館内にある茶室「松滴庵」にて、小間でのお稽古を開きました。

「松滴庵」は、上野の東京国立博物館に現存する茶室「六窓庵」を手本として建てられた茶室で、かつては政財界の著名人を招いた茶会も数多く催されていたそうです。
『小間』というのは四畳半以下の小さな茶室のことと定義されていますが、そもそも小間の発生した経緯や、茶道の歴史などを座学でお伝えすることからスタート。

茶道の歴史は、単なる作法ではなく、人々の暮らしや価値観と深く結びついています。だからこそ、歴史や風俗を交えながら学ぶことで、お稽古の理解はぐっと深まるように感じています。
広間ではつづけて生徒さん同志で茶箱の練習をしていただき、残りの方は小間へ。

今回の小間は、二畳中板。通常、小間は畳のみで構成される事が多いですが、「中板」と呼ばれる板が中央に横たわることで、空間全体に凛とした緊張感が生まれます。わずかな構成の違いだけで、場の空気がここまで変わることに、改めて驚かされました。
主客に分かれてのお稽古では、点前をする生徒さんたちが、普段よりも低い茶道口や中板の位置に少し戸惑いながらも、次第にその場に身体を馴染ませていきます。
無理に動かず、抗わず、静かに空間へ溶け込んでいく姿がとても美しく、印象的でした。

小間特有の「躙口(にじりぐち)」は、高さおよそ70cm、幅67cmほど。実際にくぐると、その想像以上の狭さに驚きます。
(躙口は高さが約70cm、幅が約67cm程度。奈良の大仏(盧舎那仏)の鼻の穴のサイズが、縦約30cm×横約37cmですので、倍くらい。 関西の方はお分かりいただけるでしょう。その狭さを。)
生徒さんからは、
「こういう場所で、武士の密会のようなことも行われていたのでしょうか」
という問いも。
実際には、この躙口をくぐるには想像以上に時間がかかります。もし武士であれば、“中から誰かが飛び出してくるかもしれない”という緊張感を抱えたまま、この姿勢を維持するのはかなりの恐怖だったのではないでしょうか。
そう考えると、こうした小間は、武士というよりも、町衆たちの静かな対話や密談の場として、より機能していたのかもしれません。
互いに多くを語らなくても、風の流れや、障子越しの光、水の音に耳を澄ませているうちに、不思議と気持ちが静まっていきます。
便利さや効率とは異なる、“小さくなることで生まれる豊かさ”を感じた一日でした。
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