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一菓一話 #03|すくいあげた宝石のような夏「金魚」
- 2025年7月23日
- 読了時間: 1分
夏バテだったんですよ。
と毎年言い訳をしながら、海外旅行後は楽しい思い出のことで頭がいっぱいになり、SNS投稿はすっかり止まってしまう。写真を見つめながら心はまだ旅の途中。「楽しかったな。」「次、どこ行こうかな。」と一ヶ月ほど旅行の余韻に浸りつづける。
こんなにまで毎日を堕落――いえ、幸せにひたらせてくれる思い出は、直近の非日常な強烈体験だからであると思う。思い出には筋肉と同じでざっくり2種類あると思っていて、すっかり忘れてしまっていたのに何かの拍子にぼんやりふわっと立ち現れる、遅筋のような淡い思い出と、直近で味わった、日常とのコントラストがあるがゆえに毎日思い出してしまう速筋のようなそれ。
淡いそれの代表が、幼い頃の夏の景色。
もう戻ってこない、両親に見守られながら金魚すくいの”ポイ”を握りしめて、目の前の金魚に没頭した夏祭りの夜。なぜあんなに夢中になれたのか。
格闘の末に手に入れた赤い小さな生き物を、まるで宝石かのように眺めて大事に家に持ち帰った。
思わず青い空を見上げながら、淡い記憶に想いをはせる菓子。
まるであの夏の夜に戻ったように、記憶が静かにゆらめく。

伊勢屋「金魚」
#一菓一話 | お菓子の向こうに浮かぶ、記憶と季節、そして文化の話を、少しずつ。
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